明治大学校友会兵庫県支部特別講演会

百瀬恵夫 明治大学名誉教授

明治魂と人間力

「もののふを育む理念」

百瀬氏は、長く政治経済学部の教授をされ、「日本的風土における中小企業論」「日本のベンチャービジネス」など多くの著書があります。この講演で強調されたのは、「見かけ上の”知識”ではなく人としての心、人間力が重要であり、明治大学は創立当から多くの人が、これを実践してきた」ということです。

その代表的な人物として、創立者である岸本辰雄、宮城浩蔵、矢野操、政界では、三木武夫、村山富市氏 スポーツ界では、北島忠治、島岡吉郎、姿三四郎のモデルになった人物 姿節夫氏、芸能界の古賀政男、阿久悠(淡路島出身)、北野武氏らを講演で挙げ、これらの人々の共通する個性のあるオンリーワン型の人たちであることを強調。

設立当時の明治法律学校は、早稲田(大隈重信)や慶応(福沢諭吉)のように有名な人物による学校ではなく無名の若い3名の法律学者の共同による設立であった。

この時から「権利自由」「独立自治」の理念に基づき「個を強くする大学」と引き継がれてきた。

歴代の明治出身の総理大臣として三木、富山氏がいるが、特徴的なのは、二人とも個性豊かな人物であり金権政治下の田中角栄の後を受けて、クリーン三木といわれ最後までクリーンさを貫いた三木武夫氏。最初の野党総理として阪神淡路大震災に対応した村山氏と個性豊かな人物」である。

ラグビーの北島氏は、”前へ”を基本に卑怯なまねはするな!ルールは守れ。勝ち負けよりは、前への信念を貫いた。

戦後の混乱期に私財を投じてグランドを作ろうと働きかけ明治だけでなく早慶東立などの協力をなども受けて作りあげた。

長くラグビー部の指導し最後まで北島を慕う人は、つきなかった。

また、野球部でも島岡吉郎監督もあまりにも有名である。応援団出身の島岡氏は、大学だけでなく、明治高校の指導にも偉業を残している。島岡監督は、野球そのものより学生の人間形成に心を砕いた。島岡の「人間力野球」には厳しい躾があった。合宿所の便所当番は4年生であることは、あまりにも有名である。社会人になると様々な試練に出会う。その時に、それを跳ね返すだけの精神力を身に着けてもらいたいというのが島岡御大の親ごころであった。

スポーツ界だけでなく芸能界では、古賀政男,阿久悠は代表的な人物である。

古賀政男氏は、マンドリン倶楽部の創設者であり、戦前戦後を通じ、倶楽部の発展に寄与してきた。音楽がまだ国民生活になくてはならない時代から、苦難を重ねて発展させた功績により国民栄誉賞を受賞したことは、ついこの間のように思われる。音楽を通じて明大魂を多くの学生伝え、そのベースには、卓越した人間力があった。

また、音楽界の作詞という分野では、地元兵庫県出身(淡路島)の阿久悠が偉才を放っている。駿河台のアカデミーコモン地下一階には、「阿久悠記念館」がある。日本レコード大賞受賞作品は、5回にのぼり、阿久悠のような作詞家は、もう出ないといわれている。明大の「人間力」がここにも生きている。また、淡路島という環境が、阿久悠を偉大な作詞家にさせたといっても過言ではない。

最近、大学は大きく変わってきた。かっての明治大学のイメージは、「汗臭い」「質実剛健」

今では、学校が「おしゃれな大学」、女子が学生が多い、偏差値が高くなり入試が難しくなった。しかし、底流にある明治大学は、権利自由、独立自治、質実剛健、個を大切にすることにある。

そして、「人間力の強化」を育んでいかねばならない。

(昭和45年卒 森岡 達 記)